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歯列矯正でインプラントが必要になるケースとは?
歯列矯正治療を進める過程で、あるいは治療計画を立案する段階で、新たにインプラント治療が必要になる、あるいは検討されるケースがあります。これは主に、歯の欠損がある場合、あるいは矯正治療の結果として歯を抜いたスペースが残る場合などに見られます。まず、もともと歯が欠損している状態で歯列矯正を始める場合です。例えば、事故や虫歯、歯周病などで永久歯を失ってしまった方が、残っている歯の歯並びを整えたいと希望されるケースです。この場合、歯列矯正によって歯を適切な位置に移動させ、全体の噛み合わせを整えた上で、欠損している部分にインプラントを埋入して最終的な歯の機能と審美性を回復させるという治療計画が立てられることがよくあります。矯正治療によって、インプラントを埋入するための理想的なスペースや角度を作り出すことができるため、より予知性の高いインプラント治療が可能になります。次に、歯列矯正のために便宜抜歯(歯を並べるスペースを作るためなどに健康な歯を抜くこと)を行った結果、そのスペースを利用して歯を移動させたものの、最終的にわずかな隙間が残ってしまったり、あるいは特定の歯の欠損が審美的・機能的に問題となる場合に、その部分をインプラントで補うというケースも考えられます。ただし、便宜抜歯のスペースは、基本的には歯の移動によって閉鎖することが目標とされるため、このケースは比較的稀かもしれません。また、非常に特殊なケースとして、先天的に永久歯が数本欠損している(先天性多数歯欠損)患者さんの場合、成長がある程度完了した段階で、まず歯列矯正によって残っている歯を適切な位置に配置し、その後、欠損部位にインプラントを埋入して全体の歯列と噛み合わせを完成させるという、長期的な視点に立った包括的な治療計画が組まれることがあります。さらに、歯列矯正を行う上で、強固な固定源(アンカー)が必要となる場合に、歯科矯正用アンカースクリュー(ミニインプラント)ではなく、将来的に歯の欠損部を補うための通常のデンタルインプラントを先行して埋入し、それを固定源として利用しながら矯正治療を進めるという考え方もあります。これは、特に多数の歯が欠損している場合や、非常に大きな歯の移動が必要な場合に検討されることがあります。