歯列矯正治療中に「噛めない」「食事がしにくい」という状況が続くと、どうしても食べられるものが偏ってしまい、栄養バランスが崩れてしまうのではないかと心配になる方もいるでしょう。特に成長期のお子さんや、体力維持が重要な方にとっては、栄養摂取は非常に大切な問題です。しかし、少しの工夫と知識があれば、噛みにくい時期でもバランスの取れた栄養を摂取することは十分に可能です。まず、主食となる炭水化物は、おかゆや雑炊、柔らかく煮たうどんやマカロニ、パンであれば柔らかい食パンやロールパンなどを選びましょう。これらはエネルギー源として重要です。次に、体を作るタンパク質ですが、豆腐や納豆、卵料理(スクランブルエッグ、茶碗蒸しなど)、ひき肉を使った料理(ミートソース、キーマカレーなど)、白身魚の煮付けや蒸し物などが比較的食べやすいでしょう。鶏むね肉やささみも、細かくほぐしたり、柔らかく煮込んだりすれば摂取可能です。牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品も、良質なタンパク質とカルシウム源となります。そして、体の調子を整えるビタミンやミネラル、食物繊維は、野菜や果物から摂取する必要があります。噛みにくい時期は、生野菜のサラダなどは避け、野菜をじっくり煮込んだスープ(ミネストローネ、ポトフなど)や、野菜ジュース、スムージーなどを活用しましょう。ほうれん草やカボチャ、人参などは、柔らかく茹でてマッシュ状にしたり、細かく刻んだりすると食べやすくなります。果物も、バナナや熟した桃、缶詰の果物など柔らかいものを選び、必要であればミキサーにかけるのも良い方法です。また、どうしても食事が十分に摂れないと感じる場合は、栄養補助食品(バランス栄養食、プロテインバー、ゼリー飲料など)を上手に利用するのも一つの手です。ただし、これらはあくまで補助的なものと考え、基本的にはバランスの取れた食事を心がけることが大切です。歯科医師や栄養士に相談し、個々の状況に合わせた食事のアドバイスをもらうのも良いでしょう。噛めない期間でも、工夫次第で美味しく、そして栄養満点な食事を楽しむことは可能です。