歯列矯正治療と姿勢には、実は密接な関係があります。噛み合わせの変化が姿勢に影響を与え、また、日常的な姿勢の悪さが矯正治療の効果や体の不調に影響を及ぼすこともあるのです。矯正治療中に首こりを感じる場合、姿勢を見直すことが症状改善の一助となるかもしれません。まず、私たちの頭の重さは体重の約10%(体重50kgの人で約5kg)もあると言われています。この重い頭を支えているのが首と肩の筋肉です。正しい姿勢であれば、頭の重みは背骨全体でバランス良く支えられますが、姿勢が悪くなると、首や肩の筋肉に過度な負担がかかります。例えば、猫背の姿勢や、スマートフォンを見る際に頭が前に突き出る「ストレートネック(スマホ首)」の状態では、頭の重みが首の前方にかかり、首の後ろ側の筋肉が常に緊張した状態になります。これが首こりや肩こりの大きな原因となるのです。歯列矯正中に噛み合わせが変化すると、無意識のうちにバランスを取ろうとして頭の位置を調整したり、特定の筋肉に力が入ったりすることがあります。元々姿勢が悪いと、この代償動作がさらに姿勢を悪化させ、首こりを助長してしまう可能性があります。では、首こり改善のためにどのような姿勢を意識すれば良いのでしょうか。基本は、立っている時も座っている時も、「耳、肩、股関節(または坐骨)が一直線上に並ぶ」ようなイメージで、背筋を自然に伸ばすことです。顎を軽く引き、胸を張りすぎないように注意しましょう。特にデスクワーク中は、モニターの高さを目線に合わせ、椅子に深く腰掛けて骨盤を立てるように意識します。足を組む癖がある方は、骨盤の歪みに繋がるため、できるだけ控えるようにしましょう。また、長時間同じ姿勢でいることを避け、30分から1時間に一度は立ち上がって軽く体を動かしたり、ストレッチをしたりするのも効果的です。寝るときの姿勢も重要です。うつ伏せ寝は首に大きな負担をかけるため避け、仰向けか横向きで寝るようにし、体に合った高さの枕を選ぶことが大切です。正しい姿勢を意識することは、首こりの改善だけでなく、矯正治療の効果を最大限に引き出し、全身の健康を維持するためにも非常に重要です。