歯列矯正治療を始めると、特に装置を装着した初期には、多かれ少なかれ「話しにくさ」を感じることがあります。矯正装置が口腔内のスペースを変化させたり、舌や唇の動きを一時的に制限したりするためです。しかし、この話しにくさは永遠に続くわけではありません。適切な対処法と時間の経過とともに、ほとんどの場合は改善していきます。まず、話しにくさを感じる期間ですが、これは個人差が大きく、使用する矯正装置の種類によっても異なります。一般的には、装置を装着してから数日から数週間程度で、徐々に舌や唇が装置の存在に慣れ、話しやすくなっていくことが多いようです。特に、歯の裏側に装置をつける裏側矯正や、マウスピース型矯正装置の場合は、舌の動きが直接影響を受けるため、慣れるまでに1ヶ月から3ヶ月程度かかることもあります。この期間を少しでも短縮し、スムーズに会話ができるようになるためには、いくつかの克服法があります。最も効果的なのは、「積極的に話すこと」そして「発音練習をすること」です。話しにくいからといって口数を減らしてしまうと、慣れるまでに余計に時間がかかってしまう可能性があります。家族や親しい友人など、気兼ねなく話せる相手と積極的に会話をし、舌や唇を装置に慣らしていくことが大切です。また、特定の音が発音しにくい場合は、その音を含む単語や文章を繰り返し声に出して練習するのも良いでしょう。例えば、早口言葉をゆっくりとしたスピードから練習したり、鏡を見ながら口の動きを確認したりするのも効果的です。焦らず、根気強く続けることがポイントです。さらに、意識して「ゆっくり、はっきり」と話すことも重要です。早口で話そうとすると、余計に舌がもつれたり、音が不明瞭になったりしがちです。相手に聞き取りやすいように、一語一語を丁寧に発音することを心がけましょう。また、唾液が溜まりやすく、それが話しにくさに繋がることもあります。こまめに水分を摂ったり、うがいをしたりするのも良いかもしれません。もし、話しにくさが長期間改善しない場合や、仕事などでどうしても困る場合は、担当の歯科医師に相談してみましょう。装置の調整や、発音訓練に関するアドバイスがもらえるかもしれません。