「前歯の出っ歯を治したい」と考えた時、多くの人が直面するのが「抜歯をするかどうか」という大きな選択です。この選択は、治療後のあなたの口元、特に横顔の美しさを大きく左右する、極めて重要な分岐点となります。抜歯ありの矯正と、抜歯なしの矯正では、一体何が、どのように変わるのでしょうか。まず、「抜歯をしない」場合を考えてみましょう。非抜歯矯正では、歯を抜かずに、歯列のアーチを側方に拡大したり、奥歯をさらに後方へ移動させたり、あるいは歯の表面をわずかに削ったりして、前歯を並べるためのスペースを作り出します。健康な歯を抜かなくて済むという大きなメリットがあり、治療期間も比較的短く済む傾向があります。しかし、この方法には限界があります。元々の顎の大きさに比べて歯が大きく、スペースが大幅に不足している場合、無理に非抜歯で歯を並べようとすると、歯列全体が前に押し出される形になります。その結果、歯のガタつきは治っても、口元の突出感は改善されない、あるいはむしろ悪化してしまうリスクがあるのです。これが、非抜歯矯正で出っ歯を治そうとした際によく見られる失敗パターンです。次に、「抜歯をする」場合です。出っ歯の治療では、一般的に犬歯の後ろにある第一小臼歯を抜歯します。これにより、前歯を後ろに下げるための十分なスペース(片側約7〜8mm)が確保されます。このスペースを利用して、前歯全体を大きく後方へ移動させることができるため、口元の突出感が劇的に改善され、鼻と顎を結んだEラインが整った、すっきりとした横顔を手に入れることが可能になります。もちろん、健康な歯を抜くことへの抵抗感や、治療期間が長くなるといったデメリットはあります。どちらの選択が正しいかは、あなたの出っ歯の程度、骨格、そしてあなたが何を最も重視するかによって決まります。軽度の出っ歯で、少しでも歯が並べば満足という場合は非抜歯でも良いかもしれません。しかし、口元の突出感を根本的に解消し、美しい横顔を手に入れたいと強く願うのであれば、抜歯はゴールにたどり着くために必要な、価値ある選択となるでしょう。専門医による精密な診断のもと、両方のメリット・デメリットを十分に理解した上で、後悔のない決断をすることが重要です。
前歯の出っ歯を治したい!抜歯あり・なしで何が変わるのか