歯列矯正治療中に使用する矯正装置の種類によって、発音への影響の仕方や程度は異なります。代表的な矯正装置である「ワイヤー矯正」と「マウスピース型矯正装置」、そして「裏側矯正」が、それぞれ発音にどのような影響を与える可能性があるのかを見ていきましょう。まず、歯の表側にブラケットとワイヤーを装着する「表側ワイヤー矯正」の場合、舌の動きに直接的な影響は少ないため、発音への影響も比較的軽微であると言われています。しかし、装置を装着した直後や、ワイヤーを調整した際に口内炎ができたりすると、痛みで話しにくさを感じることがあります。また、唇が装置に引っかかり、スムーズに動かせないことで、一時的に特定の音が発音しづらくなることもありますが、多くは慣れとともに解消されます。次に、歯の裏側(舌側)に装置を取り付ける「裏側矯正」は、発音に最も影響が出やすいと言われています。装置が舌の可動域に直接触れるため、特にサ行、タ行、ナ行、ラ行など、舌を歯の裏側に接触させて発音する音が不明瞭になりやすい傾向があります。舌が装置に当たって傷ついたり、口内炎ができたりすることも、発音のしづらさを助長する要因となります。ただし、最近ではブラケットの小型化や薄型化が進み、以前に比べて発音への影響は軽減されてきています。多くの場合、数週間から数ヶ月で舌が装置に慣れ、発音も改善していきます。そして、「マウスピース型矯正装置」は、透明なマウスピースを歯全体に被せるため、口腔内のスペースがわずかに狭くなったり、舌の先端がマウスピースの縁に当たったりすることで、一時的に発音のしづらさを感じることがあります。特に、サ行やタ行などの摩擦音や破裂音が、息がこもったような音になったり、舌足らずな話し方になったりすることがあります。しかし、マウスピースは比較的薄く滑らかなため、ワイヤー矯正に比べると違和感は少なく、慣れるのも早い傾向があります。また、重要な会議やプレゼンテーションの際には一時的に取り外すことも可能ですが、推奨される装着時間を守ることが治療効果を得るためには不可欠です。どの装置を選択するにしても、発音への影響は一時的なものであることが多いです。歯科医師とよく相談し、それぞれの装置の特性を理解した上で、ご自身のライフスタイルや希望に合ったものを選択することが大切です。
矯正装置と発音の関係!ワイヤーとマウスピースそれぞれの影響