「全体の歯並びは悪くないけれど、この前歯の隙間だけが気になる…」「少しだけ重なっている前歯を、手軽に治せたらいいのに…」そんな風に、特定の悩みをピンポイントで解決したいと考える方に最適な選択肢が「部分矯正(MTM:Minor Tooth Movement)」です。文字通り、奥歯は動かさず、主に見た目が気になる前歯だけを対象に歯を動かす治療法です。この部分矯正が持つ最大のメリットは、「期間が短く、費用が安い」こと。全体の歯を動かす全体矯正が平均2〜3年かかるのに対し、部分矯正は動かす歯の本数が少ないため、数ヶ月から1年程度という短期間で治療が完了します。治療範囲が限定的なので、費用も全体矯正の半分以下、20〜50万円程度で済むことが多く、治療へのハードルがぐっと下がります。また、装置をつける範囲も前歯周辺に限られるため、治療中の違和感や食事の不便さも比較的少ないと言えるでしょう。しかし、この手軽に見える部分矯正にも、知っておくべきデメリットと限界が存在します。最も重要なのは、「適応できる症例が限られる」ということです。部分矯正は、奥歯の噛み合わせに問題がなく、前歯の軽度のガタつきや隙間を治すのに適した治療法です。出っ歯や受け口など、骨格的な問題が関わっている場合や、歯を並べるスペースが大幅に不足している場合には、部分矯正だけでは根本的な解決にはならず、満足のいく結果が得られないことがあります。無理に部分矯正で治そうとすると、歯は並んでも口元が突出してしまったり、治療後に後戻りしやすかったりするリスクがあります。また、軽度のガタつきを治すために、歯の表面をわずかに削ってスペースを作る「IPR(ディスキング)」という処置が必要になることもあります。部分矯正は、あなたの悩みをスピーディーかつリーズナブルに解決してくれる素晴らしい選択肢ですが、それはあなたの歯並びがその適応症例に合致している場合の話です。まずは専門医による正確な診断を受け、部分矯正のメリットだけでなく、限界についてもしっかりと説明を受けた上で、自分にとって最適な治療法を選択することが、後悔のない笑顔への一番の近道となります。
前歯だけ治したい!を叶える部分矯正のメリット・デメリット