歯列矯正治療は、歯並びや噛み合わせを整えることで、見た目の美しさだけでなく、発音にも影響を与えることがあります。多くの場合、矯正治療によって歯並びが改善されると、舌の動きがスムーズになり、これまで不明瞭だった発音がクリアになるなど、ポジティブな変化が期待できます。しかし、治療期間中、特に装置を装着した直後や種類によっては、一時的に話しにくさや滑舌の悪さを感じることもあります。歯並びと発音には密接な関係があります。例えば、前歯に隙間がある「すきっ歯(空隙歯列)」の場合、息が漏れてサ行やタ行の音が不明瞭になることがあります。また、前歯が前突している「出っ歯(上顎前突)」や、下の歯が上の歯より前に出ている「受け口(下顎前突)」、上下の前歯が噛み合わない「開咬」なども、舌の位置や動きを制限し、特定の音の発音に影響を与えることがあります。歯列矯正治療によってこれらの不正咬合が改善されると、舌が正しい位置でスムーズに動かせるようになり、息のコントロールもしやすくなるため、発音が明瞭になる効果が期待できるのです。特に、アナウンサーや俳優、歌手など、声を職業とする方にとっては、滑舌の改善は大きなメリットとなるでしょう。一方で、矯正治療期間中には、一時的な発音のしづらさを経験することがあります。特に、歯の裏側に装置を取り付ける「裏側矯正(舌側矯正)」や、取り外し式の「マウスピース型矯正装置」は、舌の動きや口腔内のスペースに影響を与えやすいため、サ行、タ行、ラ行などの音が発音しにくくなったり、滑舌が悪くなったりすることがあります。また、表側のワイヤー矯正でも、装置に唇や舌が慣れるまでは、話しにくさを感じるかもしれません。しかし、これらの発音の変化は、多くの場合一時的なものであり、数週間から数ヶ月で徐々に慣れていくことがほとんどです。発音練習をしたり、意識してゆっくり話したりすることで、より早く慣れることができるでしょう。治療による最終的な発音の改善を期待しつつ、一時的な話しにくさにも適切に対処していくことが大切です。
歯列矯正で発音は変わる?滑舌改善と一時的な話しにくさの全貌