歯列矯正治療は、口腔内の環境を大きく変化させるため、時に体全体のバランスにも影響を及ぼすことがあります。矯正中に感じる首こりは、もしかすると体の一部に生じた「歪み」のサインかもしれません。私たちの体は、頭から足先まで、骨格、筋肉、神経などが複雑に連携し合ってバランスを保っています。その中でも、顎関節は頭蓋骨と下顎骨を繋ぐ重要な関節であり、噛み合わせの変化は、この顎関節の位置や動きに影響を与えます。顎関節の位置がわずかにずれるだけでも、それを補うために首の筋肉や背骨、骨盤などが代償的に歪みを生じさせることがあるのです。例えば、矯正治療によって一時的に噛み合わせが不安定になると、無意識のうちに顎を特定の位置で噛もうとしたり、頭を傾けたりする癖がつくことがあります。このような不自然な姿勢が長時間続くと、首や肩の筋肉に偏った負荷がかかり続け、筋肉の緊張やこり、痛みを引き起こします。さらに、この歪みが首だけでなく、背骨や骨盤にまで波及すると、肩こり、腰痛、頭痛、めまい、手足のしびれといった、一見すると歯とは関係なさそうな様々な不調が現れることもあります。特に、元々姿勢が悪かったり、体の左右のバランスが崩れていたりする方は、矯正治療による変化が体の歪みを助長しやすい傾向があるかもしれません。矯正治療中の首こりは、単なる筋肉の疲れとして片付けるのではなく、「もしかしたら体のどこかに無理が生じているのかもしれない」という視点を持つことも大切です。もし、首こり以外にも体の不調を感じるようであれば、担当の歯科医師に相談するとともに、必要に応じて整体やカイロプラクティック、理学療法士など、体のバランスを専門とする専門家の意見を聞いてみるのも一つの方法です。体の声に耳を傾け、早期に対処することで、より深刻な問題への発展を防ぐことができるでしょう。
矯正中の体の歪み?首こりはサインの一つ?