笑った時に見える前歯の隙間、いわゆる「すきっ歯(空隙歯列)」。チャームポイントと捉える人もいますが、食べ物が挟まりやすかったり、発音が不明瞭になったり、見た目が気になったりと、悩んでいる方も少なくありません。このすきっ歯、前歯だけを対象とした部分矯正で手軽に治せるのでしょうか。その答えは、「隙間の原因によります」というのが正解です。前歯に隙間ができる原因は、主に三つに大別されます。一つ目は、「顎の大きさと歯の大きさのアンバランス」です。顎のアーチに対して歯が全体的に小さい、あるいは歯の本数が足りない(先天性欠如)といった場合、歯と歯の間にスペースができてしまいます。この場合、隙間が前歯だけでなく、奥歯にも点在していることが多く、全体のバランスを考えて歯を動かす必要があるため、全体矯正が推奨されます。二つ目は、「悪習癖」によるものです。無意識のうちに舌で前歯の裏側を押す癖(舌突出癖)があると、その圧力で前歯が前方に押し出され、隙間ができてしまいます。この場合は、矯正治療で隙間を閉じるのと同時に、舌の正しい位置や使い方をトレーニングする「MFT(口腔筋機能療法)」を併用しなければ、根本的な解決にはなりません。癖が残ったままだと、治療後に必ず後戻りしてしまうからです。そして三つ目が、上記のような問題がなく、「純粋に前歯だけに隙間がある」ケースです。例えば、前歯二本の間に過剰な組織(上唇小帯)が入り込んでいる場合や、特に原因なく少しだけ隙間が空いている場合などです。このようなケースこそ、「部分矯正」の絶好の適応症例と言えます。ワイヤーやマウスピースを用いた部分矯正で、数ヶ月という短期間で隙間を閉じることが可能です。また、矯正治療以外にも、歯の表面にプラスチックの樹脂を盛り足して隙間を埋める「ダイレクトボンディング」や、歯の表面を薄く削ってセラミックのシェルを貼り付ける「ラミネートベニア」といった、審美歯科的なアプローチも選択肢となります。あなたのすきっ歯の原因は何か。それを正確に診断してもらうことが、最適な治療法を見つけるための第一歩です。