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綺麗になったはずなのに鏡を見るのが辛い
「歯並び、すごく綺麗になったね!」。矯正装置が外れた日、友人たちは口々にそう言ってくれました。長年のコンプレックスだった八重歯はなくなり、がたがただった歯は見事に整列しています。客観的に見れば、治療は紛れもなく成功したのでしょう。でも、鏡に映る自分の顔を見るたび、私の心は晴れない霧に覆われたままでした。私が手に入れた綺麗な歯並びと引き換えに、失ったものがあったからです。それは、顔の若々しい丸みと、バランスの取れた輪郭でした。治療後、私の顔は明らかに以前より面長になっていました。頬はこけ、口元はすっきりしたものの、その分、鼻の下から顎先までの距離が間延びしたように感じられます。以前の自分の写真と見比べると、その差は歴然でした。友達の「綺麗になった」という言葉は、歯並びだけを指しているのだと分かっていても、素直に喜べない自分がいました。心の中では「でも、顔、長くなったと思わない?」と叫びたいのに、そんなことを言えるはずもありません。せっかく褒めてくれているのに、水を差すようなものですから。この顔貌の変化の最大の原因は、おそらく抜歯矯正による口元の後退と、それに伴う咀嚼筋のボリュームダウンだったのだと思います。カウンセリングの時、私は「とにかく口元の突出感をなくしたい」と強く希望しました。その結果、医師は抜歯をして前歯を大きく下げる計画を立て、私もそれに同意しました。しかし、その時、歯が下がった結果、顔全体のバランスがどう変わるのか、そこまで深く想像できていませんでした。エラが張っていたのが少しコンプレックスだったので、顔がシャープになることはむしろ歓迎していたのです。でも、実際には横幅が減った分、縦の長さが強調され、疲れたような、寂しい印象の顔になってしまいました。歯並びのコンプレックスからは解放されたのに、今度は「面長な顔」という新しいコンプレックスが生まれてしまった。このやるせない気持ちを、誰にも打ち明けられないまま、私は今日も作り笑顔で鏡の前に立っています。