「インプラントアンカーという、小さいネジを歯茎に埋め込みますね」。矯正相談で訪れたクリニックで、先生からこともなげにそう告げられた時、私の頭の中は一瞬で真っ白になりました。ネジ?歯茎に、埋め込む?ただでさえ歯に金属の装置がつくことに抵抗があったのに、追い打ちをかけるように告げられたその言葉は、まるでSF映画のワンシーンのように聞こえました。その日から、私の頭の中は「インプラントアンカー 痛み」「歯列矯正 ネジ 失敗」といった検索ワードでいっぱいになりました。ネット上には、想像を掻き立てるような手術のイラストや、痛々しい体験談が溢れており、見れば見るほど恐怖心は増すばかり。「本当にこんなことしなきゃいけないの?」「もっと普通のやり方はないの?」と、治療そのものへのモチベーションさえ失いかけていました。不安がピークに達した私は、もう一度先生に話を聞きに行くことにしました。私のこわばった表情を見て、先生は模型やレントゲンを使いながら、なぜ私のケースにインプラントアンカーが必要なのかを、改めて丁寧に説明してくれました。私の目標は、長年コンプレックスだった口元の突出感を解消すること。そのためには、前歯を大きく後ろに下げる必要があり、その際に奥歯が前にずれてしまうのを防ぐために、アンカーが「絶対に必要な固定源」なのだと。そして、埋め込む際は麻酔をするので痛みはなく、処置も数分で終わること、術後の痛みも鎮痛剤でコントロールできる範囲であることなどを、穏やかな口調で語ってくれました。先生の真摯な説明を聞くうちに、私の心の中にあった漠然とした恐怖が、少しずつ具体的な理解へと変わっていくのを感じました。これは、私の理想の口元を手に入れるために、避けては通れない、そして最も確実な道筋なのだと。不安がゼロになったわけではありません。でも、「この先生となら乗り越えられるかもしれない」という信頼感が、私の心を支配しました。その日、私は腹を決めました。未知なる小さなネジと共に、私の人生を変えるための挑戦を始めようと、そう決意したのです。
私がインプラントアンカーを決意した日のこと